安倍総理の電撃辞任は新型コロナ問題への対応に関しては結果としてよかったのではないかと思います。安倍元総理は大変運が良かったと思います。日本では7~8月に新型コロナの第二波がピークアウトしていて、GoToトラベルでも大きな感染拡大が起こらず、感染中心化(エピセンター化)していた東京でも感染の鎮静化が見られていました。今後は東京のGoToトラベル参加で首都圏の人口が地方へ観光、ビジネスで移動することに対する制約がはずれますが日本人は自己責任で慎重な行動をとるでしょうし、クラスター対策とピンポイントの積極的検査拡大は現時点で機能しているようです。
安倍政権の末期にはコロナ対策は停滞していました。今後のヴィジョンも示されず、ただ経済を回さなければならないという当然のことだけが言われるだけでした。総理の決断が滞っていたのはご病気の影響もあったでしょう。しかし、そのままでは冬の第三波に対してどんな手を打てるのか見えてきませんでした。国と国の外交問題ならば手の内を見せない、味方をも欺くという手段も致し方ないかも知れません。しかし国民の不安を取り除くべき新型コロナ感染症の問題においては対策の展望が示されないというのは政治として致命的です。
まだ出発したばかりですが安倍政権を引き継いだ菅総理と新厚生労働大臣の田村氏には大いに期待したいと思います。腹を決めれば菅総理には行動力、政策を実現する能力がありそうです。田村大臣は元厚生労働大臣でもあり、これまでテレビ番組などで新型コロナ対策について見識ある意見を語っておられたという印象を受けています。政治と政策の実現はさまざまな抵抗勢力との戦いでもあり、強いリーダーシップを持った政治力と発信力のある政治家が強力に推し進めるのでなければ満足な結果は得られないと思います。世界と日本が直面する新型コロナ感染症の問題でも強力な政治の役割が求められると思います。
新型コロナの問題と原子力発電の危険性の問題とを重ね合わせて、医学、科学の観点から何が望ましいのかと経済、政治的観点からどう決断するのかを切り離すべきという考えがありますが、これはちょっと違うのではないかと思っています。確かに論点整理は大切です。しかし、医学がどれだけ新型コロナ感染症のことをわかっているのか、科学というのは近未来を予想出来てもそれは仮設にすぎないので、こうすればこうなるというのは単なる想定のことにすぎません。不確実性の中で政治は決断するので大切なのは可能な限りの透明性であって科学と政治の切り離しではないのだろうと思います。
医者は医者の立場、学者は学者の立場から、政治に対して、国民に対して責任を持って情報を出していくのは大切です。そうですね気象庁と各自治体の避難指示などの判断の違いはあるのでそこは明確に区別すべきですが問題はむしろ専門家会議がコロナ政策の顧問になっていることでそれは政治家が専門性を持たないためコロナ対策をうかつに決められないためです。行政側にアメリカのCDCのように専門性のある対策主体があるのなら一番良いと思います。現状、コロナの抑え込みという段階から経済を出来るだけ回しながらコロナをコントロールしていく「ウィズコロナ」の段階に来ているので専門家会議がそれに応じたアドバイスをしているのは適切であろうと思います。
新型コロナパンデミックでは利害の対立が避けられません。私のように介護支援従事者は仕事をする上で出来るだけ検査を受けて安心して仕事したいと思います。医療従事者の中には検査が負担となる方もおられ、差し迫った必要もなく検査を増やしていくのは迷惑だと思われるでしょう。高齢者はリスクが高いので人が地方に来て欲しくないでしょう。観光業、飲食業などに従事する方は県内だろうが県外だろうが人が来てくれなければ廃業するか死ぬかしかないでしょう。そういう社会の弱みに付け込むのが新型コロナウイルスのテロたるゆえんです。非武装の弱者をねらうことで社会全体を弱体化させる、経済を破壊していく。
人は分裂してたたかってはいけないと思います。さらに新型コロナを口実に監視社会を強化したり独裁政権の権力を強めたりするなどもってのほかです。何とか最善策を見つけてこの危機を乗り越えていかなければなりません。日本の場合、複数あるであろうファクターXによって今の所感染爆発が起こっていません。重症者や死者は低く抑えることが出来ており、この程度、このままの数字で推移していくことが望まれます。そのためには危険要因をコントロールしつつゆっくりと経済を回していくことが大切です。
IOCのバッハ会長や菅総理がここにきて東京オリンピックの開催に前向きな発言をされています。オリンピックの開催はコロナ感染の機会を増やし、危険要因となるわけですが個人的に、東京オリンピック、パラリンピックは出来ることなら何とかどんな形でも開催して欲しいと思っています。オリパラのスポーツ選手に対する個人的感情が大きいです。情緒的な応援なのですが、中止となると寂しい限りです。
コロナ感染に対する対策は打てるはずです。出来ることは全てやって、それは日本にとってプラスになると思うのです。少しの犠牲を受け入れる覚悟も必要でしょう。寛容になり、コロナ差別や蔑視をなくし、大変な努力をしてやれば感動と希望を世界に届けることが出来ると思っています。