新型コロナ感染症のPCR検査については今でも、かかりつけ医からは保健所に相談し、了解を得て検査機関を紹介されるというルートが重きを占めているのではないでしょうか。東京都ではドライブスルー検査所が出来た区もあり、区により独自の取り組みがなされているようですが全体的には従来のように検査の入り口にいくつもの条件が課せられ個別の医師の判断を制約しているのが現状ではないかと思います。ともかく症状があっても四日待てだの二日待てだの、時間がかかりすぎるのです。週刊朝日、AERAdot.の記事によれば具体的に東京では以下のガイドラインが配られているとのことです。
「週刊朝日はPCR検査の件数が絞られている「動かぬ証拠」と言える文書を入手した。 その文書は<かかりつけ医の外来診断手順(初診例)>というタイトルが入ったもの。3月26日の日付で、新型コロナウイルスに感染した疑いを持って病院を訪れた初診の患者が病院の紹介を受け、新型コロナ外来でPCR検査を受けるまでの道のりがフローチャートで示されている。本誌にこの資料を提供した内科医がこう解説する。
「これは東京都の医師会から都内の開業医に配られた文書です。チャートは、PCR検査を受けさせる対象を『絞り込む』ためのものにほかなりません」
4月6日にPCR検査が公的医療保険の適用対象となり、全国に869カ所ある「帰国者・接触者外来」の医師の判断で保健所を通さず受けられるようになった。だが、一般の「かかりつけ医」などは相変わらず保健所の判断を仰ぐしかないのが実状。この文書はそのための判断基準として配布されたもののようだ。
チャートを一見するだけでも「すごろく」のように長く複雑な道のりを辿らなければならないことが見て取れる。<発熱37・5度以上>や<倦怠感>といった条件は厚生労働省のホームページなどでも示されている目安の通りだが、それ以外に<呼吸苦、頻呼吸><聴診にてラ音捻髪音>といった肺炎の疑いを示す兆候があった場合、血液検査や胸部X線検査が行われることがわかる。
こうした手続きの末、症状が4日以上改善しない場合などに新型コロナ外来でPCR検査を受けることになる。いわばこのチャートの「ゴール」なのだが、そこに立ちふさがるのが次の「3条件」だ。<37・5度↑>/<SPO2<93%>/<肺炎像+>
つまり、37・5度以上の発熱があり、かつ胸部X線検査で肺炎の像が認められる患者で、SpO2が93%以下の者がPCR検査を受けられることになる。SpO2とは動脈血酸素飽和度のことで、血中に取り込まれた酸素が赤血球と結合している割合。これが93%ということは何を意味するのか。前出の内科医は憤りつつこう語る。
「私たちは通常98%くらいの酸素飽和度で生きています。93%というのはゼーゼーハーハーいって死にそうなくらい苦しい状態です」
つまり、この基準ではかなり危険な状態まで症状が悪化しないと、PCR検査を受けられないことになる。
「3条件すべてを満たさないと検査を受けられないならほとんどの人は対象外で、条件を満たす頃には『手遅れ』の恐れもある。これほど厳しい条件を医療従事者に示しながら一般市民にはアナウンスしていない。これでは“ダブルスタンダード”です」
「絞り込み」は、東京以外でも行われているようだ。4月10日、さいたま市保健所の所長が報道陣の取材に対し、PCR検査の実施基準を厳しくし件数を抑えていることを明かした。現役医師が激白した恐るべき医療崩壊の実態とは――。」
AERAdot.【独占入手】患者に隠されるPCR検査「3条件」とは?現役医師が告白「コロナ野放し」の実態 2020/04/13 16:00より
どうしてこの状況が改善されないのか、報道1930 4月27日(月)上昌広 医療ガバナンス研究所理事長
松原 「上(かみ)さんどうですか何が一番結局足りない、何があれば(PCR検査が)増えるんでしょう?」
上 「これは一月に厚生労働省が感染症法という法律に新型コロナウイルスを入れたことが問題なんですよ。診断しちゃうと強制的に入院しなきゃいけないんです。病床の数が限られていたのでなんとか診断しないようにしようとしたんです。だから専門家会議が重症例だけPCRするとか、厚生労働省がPCRをしたら医療が崩壊するって言ったのは、そういうことを法律で決めたからなんですね。自縄自縛に陥ったんです。わかったことは非常に伝染力が強いこと、大部分が軽症とわかったんです。そのへんにいっぱい感染者がいる可能性があるんですが診断してしまうと強制入院なんです。今はホテルで泊めなきゃいけないんです。PCR診断を増やすと自分たちの仕組みがパンクしちゃうんですね。これは、もともと日本がコレラとかペストを対象に診断したらその人を隔離、家族を閉鎖しちゃう、家ごと閉鎖しちゃうことをやってきたんです。このウイルスは全くそういうもんじゃないんです。」
松原 「自分たちの仕組みがパンクするとおっしゃいましたけど、自分たちの仕組みを守りたいのは誰ですか?」
上 「厚生労働省の健康局っていう一部門ですね。そこの課が検疫法と感染症法を持ってるんです。そこが一月に発動したんです。こんなことになると思ってなかったんですよ。だから感染症病床っていう日本にわずかしかないところに強制入院させるので、そこがすぐパンクするのでPCRをしたら医療がパンクするとずーっと言い続けたんです。」
松原 「その後自宅と言って、あるいは今は施設と言っていますが入院を強制的にしなくて良くなったら、じゃあ増やそうと、そうなったら一気に増えてもいいはずですがそれでもそんなに増えていない、これはなぜですか?」
上 「3月23日からオリンピックが中止になったとたんに検査が増え始めましたよね。世論の関心が薄れた時からこつこつと増やしていると思うんです。ただなぜかわかりませんが民間にフルには頼んでないんですよね。その後NHKスペシャルなんかでクラスター班の先生方がクラスターをやっとけば大丈夫だと言ってましたのでやっぱりそういう中での相克があるんだと思うんです。検査を増やすことで相対的に影響力を失う人たちがいますからね。あくまでプロバイダーサイドの理屈です。」
松原 「…専門家の中でも実は今でも意見が分かれているから一気に進まないということになるっていうことですか?」
上 「専門家の意見は分かれてないんです。世界でPCRに否定的な人はもはやいないんです。感染症学会と環境感染症学会の理事長は両方とも専門家会議の委員なんです。厚生労働省とまわりの有識者の中で意見が分かれているんです。PCRを増やした方がいいと思う方が増やしていて、いまだに増やすと駄目だっていう方がいらっしゃるんです。…」「厚生労働省のボタンの掛け違いなんです。一月の段階での判断が間違ったとはっきり誰かが言って、ゼロから見直さない限り同じことをずっとやるんです。…私、今日も外来やってきましたがPCR出来ないって患者さんが来られました。熱がある70代の方でしたけど電話したけど駄目だったと。はっきりと違ってたら違ってたって誤りを認めて方向転換しないと現場が混乱するんです。そして患者さんが、つけを払うことになるんです。」
ともかくいろんな物や人が足りないというキャパシティにも問題があるにせよ、無理してでも必要なところには検査をさせようという意思とリーダーシップが足りない。それは官僚がその必要を理解していないから、へんな枠をはめて検査しすぎたら医療が崩壊すると言い続けているからです。兵力が足りないから兵力の逐次投入をするんだと言っているうちにウイルスに包囲されて医療も福祉も崩壊してしまう危険を冒しているのです。これはシロウトの私だけの意見ではないということがわかっていただけるでしょうか。