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米大統領選挙と新型コロナについて

社会体制、政治、経済と新型コロナとの戦い

 日本時間で11月5日になったばかりの現在、トランプ陣営選挙戦終盤の勢いのまま大方の予想を覆して大接戦となった米大統領選挙ですが、ここに来て赤い蜃気楼、青へのシフト(レッドミラージュ、ブルーシフト)と呼ばれた現象が起こりつつあるようでトランプ氏優勢だったミシガン州が郵便投票の開封が進む中でバイデン氏の優勢に移ってきています。田舎の開票が進むとトランプ氏の挽回もあるという中、本当に予断を許さない展開になっており、トランプ氏は劣勢になった場合訴訟による逆転を狙う構えです。バイデン氏も同様に訴訟に訴えてでも勝利を譲らないと見えます。不正や間違いによる誤差を考えて再集計、勝敗確定の遅れが生じるような場合、議会や最高裁判所による投票で大統領が決まる可能性も排除出来ません。なんとも微妙なきわどい選挙となったものです。

 

 バイデン氏が勝利するならば、新型コロナのおかげとなるでしょう。勝利のカギである郵便投票への大シフトは新型コロナの蔓延がなければあり得なかったと思われます。実際、リンカーン以来スピーチ(演説)が物を言うアメリカの政治文化の中でバイデン氏のスピーチは上手とは言えず、高齢のためか失言も多く、現職大統領の名前をジョージと呼び間違えるなどの大失態もありました。

 

 トランプ大統領が敗北するなら、バイデン氏に負けたというよりコロナに負けたのだと言えるでしょう。かくして米大統領選挙の結果すら左右したかも知れない所にまで至った新型コロナ感染症との闘いですが、感染症との闘いが政治色を帯び、中国共産党との闘いとも絡み合って優先順位をつけねばならないとすれば、政治の問題が感染症の問題より重要だと考えるのは自然です。ウイグルやチベット、内モンゴル、香港や台湾で民主主義や中共からの自立を目指す人々はたぶん新型コロナのリスクより自分が逮捕され収監されたり拷問され殺されるリスクの方が恐ろしいと考えるでしょう。

 

 私が新型コロナとの戦いだと思ってきたことも実はより根本的には中共との戦いだったということだってあり得ます。中国共産党が新型コロナという感染症を利用してその一元支配を強めたり、言論統制や文化支配、監視社会の強化をはかるなら新型コロナは単なる感染症ではなく恐怖による支配の道具になっているということです。こんなことはあってはならない。

 

 だからこそ、トランプ氏の新型コロナに対する一種の不感症、無策や対策の軽視は残念でならないのです。また、トランプ氏の選挙戦略とも見える人種差別主義者との近距離感もいただけません。トランプ氏はもっと賢く、正しくコロナを恐れ、人種差別を排し、バイデン氏のコロナ選挙戦略を無力化することも出来たはずです。馬の耳に念仏なんでしょうが。もちろん、もしバイデン氏が勝利を収めたなら、中国共産党、とりわけ習近平氏との安易な妥協を避け、民主主義の包囲網を強化して中共の弱体化をはかっていただきたいと思います。期待できないのは承知の上ですが、何とかしっかりやっていただきたい。

 ということで朝を迎えたら最後アリゾナ州の去就とペンシルバニア州の競り合いがトランプ陣営の希望をつなぐという状況となっていました。まず訴訟による寝技戦略によらなければトランプ氏のあと4年というのはないだろうという、最初から準備していたかも知れませんが、いばらの道です。具体的に郵便投票のプロセスの中にどんな選挙不正がどれだけあったか、なかったかというクレーム合戦で法廷闘争を最高裁にまで持って行く、または下院の投票にこぎつけるという裏技です。これから最低一か月以上のねばり腰が必要となります。12月14日に予定されている選挙人の投票が行われてしまえば万事休すとなるのではないでしょうか。その結果は郵送されて1月6日の連邦議会で開票され、それでも万一互角かなにかで決まらない場合下院議員投票で大統領が決まるというウルトラCもありますが、その可能性は普通限りなくゼロに近いと思います。(無論新大統領になるべき人が就任前に暗殺されたり、病気や事故でなれないとなるとその時にも連邦議会の下院が代わりの人を決めねばならないそうです。)

参考:

「トランプ氏は繰り返し、郵便投票の安全性に疑問を呈してきた。今年は新型コロナウイルスの影響で郵便投票を選ぶ投票者が多いとみられ、集計に時間がかかる可能性がある。

民主党は、トランプ氏が下院に判断を任せるために集計を早く切り上げようとすることを不安視している。

米憲法の下、選挙で結果が明確にならなかった場合、各州に1票ずつ割り当てられ、下院が大統領を選出する投票を行う。下院は民主党が232議席、共和党が198議席で民主党が過半数を握るが、州ごとには共和党が26対22で過半数を得ている。ペンシルベニア州の議員は両党が同じ人数。ミシガン州は民主党7人共和党6人、リバタリアン党(自由主義者党)1人。

下院は1876年以来、大統領選の決断を下したことがない。

ペロシ氏は、大統領選の結果が来年に持ち越された場合、下院の議席数を上積みする必要があるとし、共和党から議席を獲得するため「全面的に取り組む」ように民主党に呼び掛けた。また、民主党候補者が下院で議席を獲得することを促す下院政治活動委員会(PAC)を支援するように促した。」米大統領選挙、「下院投票で決定の可能性も」 ペロシ下院議長が民主党に結束を呼び掛け

ロイター 2020/09/29 2:50 東洋経済オンライン