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COVID-19に強い日本のなぜ:油断情報注意

新型コロナが脅威でなくなる世界のために新しい日本をつくろう

 ともかく何か細工があるのではといぶかるほどに日本の新型コロナは勢いを失ったように見えます。日本は世界のコロナ危機に周回遅れで参戦しているにもかかわらず、対応が後手後手に回りスペイン風邪以来のパンデミックに圧倒されてもおかしくないところでした。ところが何がラッキーだったのか、緊急事態宣言、特にステイホームウィークの効果は著しく明日にも首都圏及び北海道の緊急事態が解除される見通しです。

 日本は手洗い、マスク、うがい、伝統的ソーシャルディスタンシングの文化など、全国の祭り、イベントさえ中止すれば感染症に強い社会的素地がありました。幸か不幸か新型インフルエンザが空振りに終わりSARSやMARS、つまり新型コロナ肺炎の親族たちが日本に入って来なかったため備えが出来ていなかったといわれます。法律も不備だらけ、あれがない、これがない、ゆえにこれもあれも出来ない。保健所はパンク寸前、アベノマスクも届かない、オンラインもパンク、マイナンバー機能せず、窓口も混雑、お金が届く頃には会社がなくなってる。なんかそういうニュースばっかりです。

 そんなドタバタを見るに見かねたように(あり得ません!(笑))COVID-19は一時退散。日本はなんてラッキーなんでしょう、と思います。とりあえず5月の太陽とシミをつくる紫外線に感謝です。フェーズが変わったと言いますが、第一波(あるいは第2波)は見事に引いていったようです。なぜ日本では対策も法律も甘々なのに感染者がさほど増えず死者は最小限に抑えられているのだろうか?日本のミステリーは世界のメディアで論じられ学術論文でもいろいろ書かれています。大阪大学大学院生命機能研究科長の吉森保栄誉教授のブログによれば(吉森教授はノーベル生理学・医学賞を受賞した大隅良典教授の弟子ということです):

エール大学の気鋭の免疫学者・岩崎明子教授が、「なぜ日本ではCOVID-19が少ないのか?」と題した論文を書いている。
https://www.embopress.org/doi/abs/10.15252/emmm.202012481?fbclid=IwAR0iCq89gbbK7sZcEGFsGJfADar9BRsdGk2TisdDs2FqtHv1TojzAphLm48

彼女は、5つの可能性をあげている。
1)日本人の習慣・文化、2)弱毒型ウイルスが既に感染、3)日本人はSARS-CoV-2受容体が少ない、4)SARS-CoV-2に強い組織適合性抗原を持っている、5)BCG接種が防御になっている。

吉森教授はさらにこの2)弱毒型新型コロナウイルス影響説について説明しています。

 世界各地に拡がったSARS-CoV-2の系統樹解析から、大きく分けて今3つのグループがあることが報告されている(これもクラスターと呼ぶ)。Aが中国の先祖型で、Bがアジア型、Cが欧州型となる。https://www.pnas.org/content/early/2020/04/07/2004999117…
この観点から日本の状況を推測した論文が出た。まだ審査前の段階の論文ではあるが、興味深いので紹介したい。

https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.03.25.20043679v1?fbclid=IwAR0Ii_RZcG0fvJhajsb1xM-JynF8Hyi74fHt4Nc6YDeucYJmcAYUDS1JWMU

この論文で著者らは、今季日本でインフルエンザが例年のように猛威を振るわなかったことに着目した。そして、インフルエンザ流行が急速に収束した地域は、COVID-19も少ないことに気付いた。彼らの仮説はこうだ。「武漢でCOVID-19の感染爆発が起こる以前に、日本にはより弱毒性のSARS-CoV-2(論文ではS型と呼んでいる。これと上記のABC型分類との関係は不明)が入り込んでいて、それとわからないまま流行していた。このS型に感染した人はインフルエンザにかかりにくかった。」

ある種のウイルスに感染していると他の種類のウイルスに感染しにくくなる現象は実際知られいる。これは抗体による防御とは別のメカニズムだ。どんなウイルスでも成り立つわけではないが、SARS-CoV-2とインフルエンザウイルスの間でも同様のことが起こる可能性はある。

もしこれが正しいとすると、日本ではSARS-CoV-2に対する抗体を既に持つ人がかなりいて、中国からさらに強毒性タイプ(L型と呼ぶ)が入ってきても抵抗性があったと考えられる

 この仮説はどこかのニュースでも聞いた記憶があります。別バージョン(同一?)はさらに最初の武漢から直接入ってきた新型コロナウイルスが感染して抗体が多くの人に出来たというもので、そのおかげでヨーロッパ経由の第二波に抵抗力があって欧米のように感染しないと。春節になっても中国からの旅行客を入れ続けていたことがけがの功名になったのではないかということでした。

 

 しかしこれらの仮設は最近なされ始めた抗体検査によるとほんの数パーセントの日本人しか感染履歴がないことから否定されそうです。あるいは検出されない別の抗体があるなら話は別ですが。

 3番目の説は人種による感染特性の相違が出るところで、本当なら遠からず研究の答えが出てもおかしくないでしょう。体内の特定な場所(例えば咽喉や舌など)の受容体の数を数えれば答えが出るのかなと思います。

 4番目の説は人種および個人によっても獲得免疫の力に差異が出る要因でややこしいのですが

共同研究グループ「コロナ制圧タスクフォース」発足 -新型コロナウイルス感染症の遺伝学的知見に基づいた COVID-19 粘膜免疫ワクチンの研究開発を促進-(プレスリリース)より引用すると

 「獲得免疫は(自然免疫より)やや遅れて動員される免疫反応で、特定のウイルスに感染した細胞 を特異的に認識する細胞障害性 T 細胞と呼ばれる細胞によってウイルスに感染した細胞が除去される」仕組みです。

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コロナ制圧タスクフォース プレスリリース 【図2】HLAと抗ウィルス免疫

HLAは「とくに人種によって多型パターンが大きく異なっている。」というのがポイントです。HLAとは白血球の血液型のようなものらしいです。ただし型が多すぎて書ききれないほどあるようです。人によって同じウイルスに感染しても重症化しやすかったり無症状で気づかないうちに治ってしまったりする原因の一つと考えられています。

(注 3)HLA:赤血球には A 型、B 型、AB 型、O 型などの血液型があるように、白血球を はじめとする全身の細胞にも型があります。その型をヒト白血球抗原(HLA:Human Leukocyte Antigen)と呼んでいます。HLA 型は、多様性が高く、個体間で大きな違 いがありますが、抗原への免疫応答性に深く関わっています。このため、特定の HLA 型ごとに特定の抗原への免疫応答性が異なることが知られています。

 5月21日に発足したこのコロナ制圧タスクフォースは最終的に新型コロナウイルスの粘膜ワクチンなるものを開発するのが目標のようですが、日本の研究機関の力を結集して新型コロナ肺炎と戦っていく上で大きな活躍が期待されます。

 最後に5番目の説はBCGワクチンの東京株が新型コロナ感染症に有効なのではないかという説です。東京株に似ているロシア株と合わせてBCG接種を受けた国と年齢層がコロナ肺炎にかかりにくいというのです。これはワクチン開発の裏技であり第4のワクチンとして効果が証明されれば素晴らしいですね。そうなれば大増産しなければなりません。

 これら5つの説ですが相互に排除されるものではないので1)はもちろんですが、全て正しいかも知れません。